貴方が、あの子を想ってくれるなら。

貴方が、あの子に笑顔をくれるなら。

貴方が、あの子を独りにしないなら。

 

私は私の大切なものを、手放したってかまわない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いとおしむということ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受話器をとって、頼りない回線で繋がれた声に返事を返す。たったそれだけのことに、あの子がどんなに救われているか、彼は知らない。

私たちにとって極々当たり前のことが、如何にあの子にとって愛おしいものか、きっとこの場にいる誰もが想像したことがないに違いない。私はあの美しい冷めた瞳が、時折私たちを捉えて優しく細まることを知っていた。

まるであの子がたった一人の妹に向けるような、愛に溢れた瞳。それに気付いていながら気付かないふりををするのは少しつらくて、そして少しだけ寂しかった。そんな瞳をするとき、あの子は大抵私たちの輪の外にいるのだ。

そんな全てを諦めた、そのくせ物欲しそうな目で見ていないで、この暖かくて柔らかい空間に、自分から入ってきたらいいじゃない。

そう思いはしても言葉に乗せることは出来ず、結局、私の胸に微かな痛みを残してその瞳は伏せられる。今更戒めじゃあるまいし、子供のように、声を上げて注意を引いたっていい。ねぇ、貴方が目を塞ぐことなんて、ここには何も無いのよ。

私だって、誰にでも心を許すわけじゃない。誰だってそうだ。クラブハウスに――――あの子の周りに集まる私たちは、みんなあの子に心を許してる。どこか踏み入らせてくれない場所があることも、自分から入ってきてはくれないことも、ちゃんとみんなわかっているのだ。それでも何も言わないのは、確かに彼が、私たちを大切に思ってくれていると知っているから。私のように本当の事情を知らなくたって、それを悟るくらいにはみんな友人のことに敏感だ。

ほら、あんたの悪友は、いつだってあんたのことを気にかけているでしょう。遊びに行くのも、ふざけるのも、悪さをするのだって一緒にしたがるじゃない。あれは、あんたが単純に好きなのよ。

ねぇ、あんたの数少ない女友達であるあの子は、ずっとあんたのこと、見てるでしょう。気付いているくせに。見ないふりをしていることくらい、私にはわかるんだから。

どうして拒むの。どうして見てくれないの。

遣る瀬無さだけがつのる。何が一番遣る瀬無いって、彼が私を「会長」と呼ぶことだ。まるで他人のように。(他人に違いは無いのだけれど)

あの子が国で安寧を約束されたまま生きていたとしたら、私はもしかしたら彼の婚約者になったかもしれなかった。――――なれたかも、しれなかった。

確かなもので繋がっていないと、私はいつまででも不安に思う。それが愛の無い婚約であったとしても、私はきっと満足だろう。あの子が笑う、あの子が呼吸をする、あの子が私を、名前で呼ぶ。そんなありきたりなくせに遠い夢を、私はきっと望んでいた。

そう、私はあの子が好きなんだ。

今、私は幸せだ。鬱陶しいお見合いが待っていたって、私は確かにここにある。生徒会での毎日は楽しく、学校にも不満は無い。

だから、これ以上は望まない。あの子と私、二人の未来が見たいだなんて言わない。あの子が私と同じように幸せなら、それが一番いい形。

私はいずれあの子から離れるだろう。それなら、誰があの子を守るの?

 

 

「君がいない」

 

 

私は思う。こんな台詞を真顔であの子に吐ける、彼なのじゃないだろうか。

彼はあの子の救いになるかしら。あの子を守って、あの子を救って、あの子を幸せにしてくれるかしら。――――可能かもしれない。だって、あの子が笑うのよ。

初めは驚いた。あの子があんな風に笑うのを、私は見たことが無かったからだ。同じ生徒会役員をしている悪友にも、女友達にも見せたことのないであろう、心からの笑顔なんて。

私にも見せたこと無いのね。知ってたけど、そんなこと。

柔らかい声と甘い言葉で、あの子をゆっくりと解いていく。そんな男だと思った。受話器の向こう側にあるかもしれない表情を思い浮かべ、私は密かに頬を緩める。

独りにならないでね。独りは怖いわ。とても、とても。

あの子が彼を必要とするなら、私はその背中を押してやらなくちゃいけない。変に不器用でまっすぐだから、そうじゃないと素直にもなれない気がするのだ。ああ、それとも、おせっかいだと言われてしまうだろうか。

どっちにしろ。

私の手を離れたあの子が、これ以上独りにどっぷりと浸かってしまう前に、お願いよ。

 

 

 

 

 

私から、躊躇いなく攫っていって。

可哀相でいとおしい、私が愛した あの子を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝わったでしょうか・・・・・・ミレイさん、です、が!(自信なし)

お見合い云々の話をルルーシュにしていたときの表情がどうしてもひっかかってしまって、ミレイさんがルルーシュのこと好きだったら萌えだよね!とひとりで勝手に暴走いたしましたすみません(土下座) いやでも寂しそうに見えたんだ・・・・・・!

実際に受話器の向こうには別理由で焦ったルルーシュがいたわけですけど、ひとりくらい、ルルーシュの幸せを心から望む誰かがいたっていいじゃない! と思いまして。

ルルミレもいいんじゃないかと思います。CルルC、ルル(ゼロ)カレ、ルルミレ。好きだ・・・・・・。