たぶんおれたちは(僕たちは)、無邪気なフリがしたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

We are not children anymore.

(私たちは、もう子供ではありません)

Therefore there wants to be still us with a child.

(故に未だ子供でいたいのです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甘い理想を並び立てる口元を、気付かれないように睨んで思う。お前が独善だと罵る“正義の味方”は、お前の友であり幼馴染であり、今は級友である目の前のこのおれなのだ。別に罵られたからといって痛むような神経もとうに捨てたが、やはり知られてはならないとは言え、面と向かって貶められるのには気が滅入る。

わかっているさ、独善だということくらい。だからこそおれは二の足を踏むわけにはいかなかったし、だからこそ独善ではなく、真実にしようという気持ちもあった。まさかそんなことを思ったからといって口に出すわけにはいかず、おれは彼を睨んでいた視線を遮るため、瞼を下ろす。

幼い頃から、この男は変わっていない。いや、変わってはいる。多少おとなしくなったし、そういえば声を上げて笑うことが少ない。だが、おそらく根が変わっていないのだ。自分よりも人、人よりも秩序、秩序よりも感情だ。一見してわかる、簡単な矛盾の図式。

それに気付いているのかいないのか、今も彼は甘いことを言う。内部から国を変える? できるものならばやってみろ。国ひとつを緩やかに変えていくには、地位と権力と時間、全てが必要不可欠だ。名誉ブリタニア人 ―――― 今の総督であるコーネリアは、憚らず彼らのことをもナンバーズと呼ぶが ―――― である彼が、軍の内部で国を変えられるほどの地位につくことは難しいだろう。ただ出世するだけでは駄目なのだ。しかも、今の配属は技術部だったか。そんなところから、どうやって国を変えるというんだろう。本当に、馬鹿。

好ましいまっすぐさは、おれの目には時に愚かに映る。その愚かさが眩しくて、羨ましくて、とても好きだ。ああ、おれは彼がとても好きなのだ。

おれがお前の嫌悪するあのテロリストだと知ったら、おまえはどうするかな。おれをなじるか、憎むか、嫌うか。泣いてくれるかもしれない、怒って口もきいてくれないかもしれない。もしかしたら殴られるかもな。

でも、なぁ、おれはまだ胸の奥底で期待してるんだ。

なじっても憎んでも嫌っても、笑ってくれるんじゃないかって。

泣いても怒っても、きっと笑顔を見せてくれるんじゃないかって。

 

最後には、おれの好きなあの笑顔で、おれを殺してくれるんじゃないか、なんて。

 

なぁ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この嘘だらけの世界の中で、救済者のようにおれを殺してくれる人間が、唯一お前であればいいのに、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近人の口端に上ることの多いテロリストを、僕は一言の元に切って捨てた。やっていることは独善だと訴えると、それに愛しい幼馴染が複雑な顔をする。

彼はかのテロリストの肯定派ではないようだが、否定派でもないようだった。我関せずといった様子だが、立場上そういった発言を控えているだけなのかもしれない。とにかく彼は僕の言葉にさえ肯定も否定も示さず、赤葡萄いろの瞳を僕に向けたままゆっくりと瞬く。宝石のようなその瞳がとても好きで、でも同時に酷く苦手だった。自分が汚いもののように思えて、異常なまでに居心地が悪くなる。

彼は、僕の知るものの中で、もっとも綺麗なもののひとつだった。たとえるなら降り続いた雪、たとえるならプラチナの白、たとえるなら葬送の煙。光を跳ね返して僕だけに輝く、乱反射の中心にいる人物。

彼は僕が軍に所属していることを、あまり快くは思っていない。優しい彼らしいことだが、僕を心配してくれているらしく、技術部に移ったと嘘をついたときなどは目に見えてほっとしていた。申し訳ない気持ちになりながらも、僕自身安堵していたのだと思う。彼が戦争など関係の無い安全なところで生きているのだと思うと、幼い頃からの心配の火種がすっと消えていくようだった。

僕は、彼がブリタニアを好いていないことは知っている。母国でありながら自分たち兄妹を捨てたのだといつか言っていたし、事実そうなのだから仕方がない。

初めて会ったときのあの瞳は、今でも忘れられずに記憶に燻っている。誰も信用せず、背に妹を庇い、小さな身体の中に育った誇りを、すでにその視線から、伸ばした背筋から、指先の動きから滲ませていた。日本が占領下に置かれた時などは、こちらがぞっとするような憎悪の瞳で、国を壊すと言っていたっけ。

でも、その憎悪の色は今の彼には見えない。もしかしたら僕にあるものと同じくまだ彼の奥底で燻っているのかもしれなかったが、少なくとも健全で、死からもおよそ遠い毎日を生きている。充分だった。愛しい彼が今を生きていけるなら、それ以上のものはもう何もいらない。

ランスロット、僕の剣。あの出来のいいおもちゃで僕が人を ―――― 同じ日本人を殺しているなんて知ったら、君はどうするだろう。

怒るかな。怒るだろうな。泣くかもしれない。泣かないで欲しい。馬鹿だと罵ってくれるなら、まだそちらの方がいい。あの頃よりも低くなった、けれども懐かしい君の声で。ああ、よく馬鹿だと言われたっけね。

わかってるんだよ、矛盾してることくらい。気付いてるんだ、心が折れてしまいそうなくらいに。僕が信じた正義は、誰かを救う前に、誰かを殺していく。

でも、僕はまだ捨てきれないんだよ。理想というやつ。持っていても、およそ役に立つとは思えないのだけれど。

君はどうするかな。

僕を叱って、叱って、少し泣いたあと。

 

僕を、許してくれる?

 

ねぇ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦いだけの現実の中で、理想ばかりで前にも進めない僕を突き放してくれる誰かが、ただ一人君であればいいのに、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えーと、ゴメンナサイ(素直)

二人の関係性についてぐるぐる考えていたら、もうなんなのこいつらってくらい鬱々としたものが出来上がってしまいました。それにしても、暗いのを書くと会話がありません。何故だ。

薄灰色の文字は、声に出せない願い、というか・・・・・・やっぱりあんまり語るのやめよう(笑)

こんなSSが書けちゃうのも、一重にアニメ本編の救いの見えなさのおかげですよ ね!(褒めてる)