僕の友人は、綺麗で賢くてチェスが強くて、嫌味なくらい自信満々です。弱点など無いように見えます。妹のナナリーちゃんが弱点だろうかと思ってはいるんですが、彼はナナリーちゃんが絡むと人が変わるので、確かめようにも怖くて出来なかったりします。からかう隙も滅多とありません。
そんな彼はおれをいつでもアッシー扱いですが、まぁそれでもいいのです。自信満々じゃない彼とかおれに優しい彼とかはもう彼じゃないし、弱点の無い彼も好きですから?(もちろん“好き”ってのは友人としてですが)
しかし、隙の無い彼の弱点を、見つけました。
おれの知らない彼は、意外と可愛かったようです。
限りなく憂鬱に近く
「スザクくんってぇ」
シャーリーが、転校生の整った顔を見上げる。最近テレビで拝んだ、その顔。やたら整ってるなぁとは思っていたが、間近で見るとさらに精悍な顔つきをしていることがわかる。なるほど、ハンサムだ。めでたく生徒会入りした彼は、ただ今シャーリーの興味の的となっている。
名誉ブリタニア人である彼の、その精悍さの中からは柔らかな空気が滲み出し、近寄りがたい雰囲気は無い。むしろニュースなどで想像していた人柄とはかけ離れているようで、それはシャーリーの隣で同じく彼を見ていたリヴァルにも判った。軍人をしているからには人を殺すことなど当たり前なのだろうが、まさか彼が人を殺したことがあるようには、とてもじゃないが見えない。
シャーリーは生来の物怖じの無さをもって、スザクに言った。
「ルルのこと、好きだったりする?」
ぶっ、と、リヴァルは口をつけていた紅茶を吐き出しかけ、慌てて口を押さえる。お菓子とお茶と一緒に書類の広がったデスクの上で、紅茶のシミを広げるのはさすがにまずい。
だが意表を突かれたのはリヴァルだけではなかったようで、見れば向かいで興味無さそうに書類をめくっていたルルーシュが、言葉も無く動きを止めている。瞳は驚いてか静止していたが、一瞬後にはすごい勢いでシャーリーを振り返った。そりゃあ講義したくもなるわな、とリヴァルは涙目で納得する。
「何言ってんだ、お前!」
「だって! スザクくん、ルルのことずっと見てるし! なんていうか、恋人を見るみたいに!」
「馬鹿か、どこの世界に、いきなり男相手に『同姓が好きか』なんて質問する奴がいる? お前ぐらいだよ」
「そうそう。シャーリー、いくらなんでも思考ぶっ飛びすぎー」
リヴァルはルルーシュの意見に軽く同意する。誰の賛同も得られなかったことでむくれたシャーリーが、両手の拳をさらにぎゅっと握りしめてルルーシュに詰め寄った。わざわざ椅子から立ち上がってまで力説する価値がある話題なのかは甚だ疑問だったが、シャーリーにとっては重要なのだろう。それがただの好奇心か、それとも個人的問題をはらんだものであるかは別にして。
不満だらけの顔をして、シャーリーは半ば呆れ顔になったルルーシュに言い募る。
「何よぉ! だって気になったんだもん、しょうがないじゃない。それに、女の勘を舐めてもらっちゃ困」
「好きだよ」
シャーリーの言葉を、遮るように。
場の空気が、再び固まった。ルルーシュはシャーリーと目を合わせたまま動けなかったし、リヴァルは紅茶のカップを落としかけた。ミレイがいればこのスザクの言葉に対して何かリアクションをとっただろうが、彼女ほど順応力に優れた人間はこの中にはいない。
ややあって、ルルーシュがスザクを見、さらに凝視した。言葉も無い、といった風情である。
「・・・・・・・・・・・・」
「えーっと・・・・・・えぇ!?」
「好きだよ?」
何でそんなに驚くの? とスザクは首を傾げる。たった今自分のした発言の重大さに気付いていないのか、心底不思議そうな瞳でルルーシュにシャーリー、そしてリヴァルを見回した。リヴァルはカップを落とさなかった自分を心の中で絶賛しながら、場の空気を少しでも動かすために口を開こうと思う。何せシャーリーは驚いて一言を発したきり動けないようだったし、ルルーシュは最初から動かない。場が本当に固まってしまったのだから、動ける自分が何とかしなくては。
とりあえず、可能性にかけよう。可能性とは唯一、スザクがシャーリーの質問の意味を図り違えているということだけである。
「あー・・・・・・つまり、だよ。シャーリーが訊きたいのは、ルルーシュを友情じゃなく、恋愛対象として好きか、ということであってだね」
「え、うん。そのつもりだったよ?」
本気か。困惑の色を深くした瞳にリヴァルのなけなしの笑顔は引きつり、続く言葉を失くした。これはえらいことになったぞ、と、もはや人事として事態を見守ることとする。
先程から一言も発していないルルーシュが不安だが、大丈夫だろうか。あまりの衝撃にさしものルルーシュも対処しようがないのではと向けた視線の先、リヴァルは信じられないものを目にし、口を開けた。
何で、耳まで真っ赤なんだよ。
「・・・ルルーシュ?」
「はっ・・・・・・ばっ、馬鹿か! お前、何でそういう・・・! 冗談はやめろ!!」
不意に、スザクがルルーシュへと声をかける。話題の中心となる人物のリアクションが無いのでは、スザクもさすがに気になったのだろう。
しかし、ルルーシュはがたんと椅子を盛大に鳴らしながら立ち上がり、真っ赤になった顔を隠す余裕も無いくらい慌てて言葉を矢継ぎ早に紡いだ。リヴァルは、彼の視界の外で眼を瞠る。
こんなルルーシュは、初めて見る。
「冗談って・・・・・・なんで冗談を言う必要があるんだよ」
「冗談じゃなかったら、何なんだよ! 悪質だ、お前がそんな奴だったなんて」
「だから、本当だってば! 僕はルルーシュのことが好きだよ」
「うっ、うるさいうるさいうるさいっ!!」
がば、と耳を塞いで、硬く目を閉じたルルーシュが叫ぶ。その怒号に黙ったスザクが続けて何も言わずにいると、ルルーシュはそっと閉じていた瞳を開いた。羞恥からか、それともただの感情の高ぶりからか、赤みを帯びた美しい瞳は潤んでいる。
リヴァルは口を開けたまま、その瞳を見つめていた。もともと校内でも女子生徒にかなりの人気が出るほどには美しい顔であるのに、今のこの表情は、今までの彼のどんな表情よりも真新しく、美しい。男のリヴァルがそう思うのだから、女子生徒なんかが見れば瞬殺ものであろう。
リヴァルは男に恋心を抱いたことなど生まれてこの方ありはしないが、それでも思うのだ。
ルルーシュは、綺麗だ。
「・・・・・・っ、もう、黙れ。このことは後で話そう」
「うん・・・? わかった」
「くそ・・・・・・!」
自分を落ち着けてからスザクに妥協案のような提案をし、ルルーシュはやっと自分の醜態に気がついたかのように舌を打った。綺麗な顔に、すらすらと口をついて出る毒。それがルルーシュの魅力だと思うのだが、今日ばかりはその毒が精彩を欠いていた。
驚嘆する。あのルルーシュにこんな表情を、こんな言葉を言わせる人間がこの世界にいたなんて。
綺麗で賢くてチェスが強くて、嫌味なくらい自信に溢れ、弱点など無いように見える。妹のナナリーが弱点だろうかと思ってはいるが、ルルーシュはナナリーが絡むと人が変わるので、確かめようにもリヴァルには怖くて出来ない。からかう隙も滅多と無い。
その、彼が。
(こりゃあ、すごいのが来たぞぉ・・・・・・)
未だ事態を把握できずにいるシャーリーを哀れみつつ、リヴァルは書類に目を戻したルルーシュを盗み見る。
綺麗な横顔は、まるで非の打ち所の無い鋭利な刃物のように。
唯一耳が赤いのは、刃を受け止めてしまう楯が表れたせいだ。まるで刃が立たないので、どうして良いものか彼自身にもわからないのだろう。その証拠に薄く形の良い唇はぎゅっと結ばれて、いつになく緊張しているのだとわかる。
弱点をひとつ、見つけた。
意外と可愛いじゃないか、などと、本人にはとてもじゃないが言えないことを、胸のうちに秘めながら。
限りなく憂鬱に近い表情で愛を囁かれる彼は、いつ陥落するんだろうか。
リヴァルの予想では、そう遠くはないのだけれど。
初ギアスSS!!初めてなのリヴァル視点って。
ルルーシュがたまらなく可愛いです。第六話を見た後に萌えすぎて大暴走するも収まらず、勢いで書き上げたものなのでもうキャラ性とか無視です、無視!(そんなはっきりと)スザクはルルーシュのことをすごく好きで、ルルーシュはそれ以上にスザクに執着してるといい。スザクはルルがいなくても生きていけるけど、ルルはスザクがいなきゃ生きていけないぐらいの。でも周囲にはそれが逆に映ればいい!!(熱弁)
っていうか、あのアニメ明らかに狙ってません?(笑)相思相愛にしか見えないんですけど!!(目のせい)
この話を呼んで判るように、もちろんリヴァルルも好きですよオホホホホ!!